2月30日

役立つかもしれない情報をノートとして残しておく。

なぜ乃木坂を推すのか。

大学生ぐらいまで、アイドルなんて下らない、と思っていた。当時、AKB48が結成されて何年か経ち、前田敦子大島優子を筆頭に、グループが隆盛を極め始めていた頃。様々な形でメディアを賑わし、有名音楽番組には必ず出演していて、目にする機会は多かった。...うーん、前田敦子がそんなかわいいと思わないし、パフォーマンスも微妙じゃない?

 

ところが。見事にハマったのである。

 

なぜアイドルにハマったのか

ハマったのは、修士2年の12月。大学院を経験した人ならわかるだろう。修論追い込みの時期である。修論はつらい。本当につらい。人生で初めて、ちゃんとした文章を100ページ近くにわたって書かなきゃいけないし、その中で少しでも破綻した文章があればすぐにボッコボコにされる。しかも私の場合、測定がなかなかうまくいかずに、修論に必要なデータを最後12月中旬まで取っていたりもした。私からしたら、D論よりもはるかにつらかった(と思う)。

そんなとき、ふと松井玲奈にハマった。彼女の出身は愛知県豊橋市、とても馴染みのある土地である。そこから、当時住んでいた名古屋を拠点とするグループ、SKE48にハマった。AKB48系列であるが、AKB48ではなく姉妹グループから入ったのは、やはり同郷としての親近感を感じたからであろう。

推しメンかわいいし、かわいいみんなが歌って踊って楽しそうにしていると、自分までなんか楽しくなってくる。アイドル、すごい。メンバーの半分ぐらいは東海三県の出身で、なんとなく親近感もわく。時々、配信メディアなどで疲れた心を癒してくれる*1SKE48の活動拠点に住んでいたおかげで、時々あるイベントでの無料公演にはひっそりと参戦することもできた。そして、みんな頑張ってる、自分も頑張れる、などと気持ちを入れ直し、研究に勤しんだのである。

SKE48は、アツいのが良かった。首都・東京を拠点とする本家AKB48に比べると、名古屋が拠点のSKE48はメディアの露出機会が少なく、その分1回1回の全国ネット出演に賭けているように見えた。それもまた良かった。

なお、余談ではあるが、ハマって約1ヶ月しか経っていない2013年1月15日、有力メンバー9人の一斉卒業が発表された*2。したがって、私はメンバーの卒業にはかなり免疫がある。

乃木坂46の結成

2011年、乃木坂46が結成された。…が、「会いたかったかもしれない」などAKBのパチものにしか見えないパフォーマンスをさせられ、秋元康AKB48をより引き立てるために敢えて本家より貧弱なグループを作ったようにすら見え、正直乃木坂メンバーには哀れさすら感じたのだった。一時期、推しメンだった松井玲奈が交換留学として乃木坂に加わったので、その期間だけ少し情報を追い、「乃木坂って、どこ?」(当時)も見た。しかし、パフォーマンスもなんとなく、SKE48と比べたらお嬢様ぶっててアツさを感じず、AKB48よりも下手に見え、なんやこいつらとかいう若干ネガティブなイメージすら覚えたのであった。

 

そして、乃木沼へ...

ところが。見事にハマったのである。(2回目)

 

はまったのは、2016年の年末*3、博士論文執筆時が大方終わり、一息ついた...と思いきや、全然まともな文章を書けず、予備審査では「研究内容は良いが博士論文が十分な質に達していない」とコメントされ、 翌月には公聴会という超超超超超恐怖イベントも控えていた*4。そんなとき、乃木坂にハマったのである。

 

なぜ、一時期はネガティブにすら思っていた乃木坂だったのか?

 

巷では、よく「乃木坂は顔面偏差値が高い」と言われる。確かに、最初はそれに惹かれたのかもしれない。当時、グループ結成から約5年が経過し、当初は見た目だけでなく精神的にも幼く見えたメンバーたちが、垢抜けて美しい大人の女性に成長してもいた*5。初期の「秋葉系」路線から、清楚なお嬢様路線に方針転換もされていた。これも魅力的に見えた点の一つであった。

しかし、最大の魅力はメンバーからにじみ出る"雰囲気"だ。いいから、2018年のドキュメンタリー映画いつのまにか、ここにいる」を黙ってみてほしい。この映画に、乃木坂のすべてが詰まっている。

私がこのグループにハマってしばらく経って、徐々に驚異的なメンバー同士の仲の良さに気づいた。あまりに仲が良い。

よく「表では仲良くても裏では色々あるんでしょ?」などと言われるが、いまどきのアイドルはSNSやモバメなどあらゆる手段で情報発信しているし、だからごまかしが効かない。いくら表で取り繕っていても、本音はすぐににじみ出てくるものである。しかし、このグループ、みんな異常に仲がいい。これだけ大人数が集まって、しかもある人たちは選抜として表題曲を歌唱し、有名テレビ番組にも呼ばれ、露出が増えればモデルなど外仕事も増える一方で、非選抜メンバーは中々日の目を見ずに悶々とした日々を過ごしている。特に、AKBグループと違って「劇場公演」を持たない乃木坂の場合、選抜メンバーとそれ以外の露出機会はけた違いである。ゆえに、メンバー間の格差は大きいのである。普通、待遇の格差は人間関係の軋轢を生む。なのになぜ、こんなに仲が良いのか。「いつのまにか、ここにいる」の冒頭でも

異常に仲が良かった

と称されている。彼女らが、我々薄汚れたホモサピエンスどもと同じ構造の遺伝子を持っているとは思えない。実は、彼女らは天上界から人間界に舞い降りた女神たちであり、我々は女神たちの戯れを見せつけられているのではないか。

 

...冷静になろう。

 

大所帯グループでありながら仲の良さを保てている理由は色々あると思う。

  • グループの人気が安定していて、あまり前に出てこない(出てくることができない)メンバーにも一定のファンがついている。
  • 選抜総選挙のように、メンバーをあからさまに順位付けするイベントがなく、表題曲センターもまぁまぁ入れ替わる。AKB48系列に比べると、まだ緩いヒエラルキーの中で活動している。
  • これまで9年の活動期間で最若手はまだ4期生であり、人の出入りが比較的おとなしい。AKB48の場合は2005~2016年の11年間で16期、SKE48は2008~2019年の11年間で10期だから、その半分以下のペースでしか新メンバー加入が発生していない。
  • 運営がうまくやっているのも大きいはずである。AKB48系列のように、メンバーを不安にさせるサプライズもなく*6、そもそも乃木坂のサプライズは、2期生の中の研究生の昇格発表だったり、基本的にポジティブである。SKE48のファンだったころは、運営がメンバーをいい加減に扱ったり暴言を吐いたりという話が時々出てきていたが、乃木坂は今野義雄氏はじめ男性スタッフも含めて、スタッフ陣がいい感じに「ファミリー」として溶け込んでいるように見える。

そんなわけで、安心して推せて、なんとなく多幸感に浸れるアイドルグループである乃木坂46の方が、いい歳したおっさんには良かった。

 

2017年10月から2020年3月まで、私はドイツの大学に雇われて研究をしていた。海外生活は楽しくエキサイティングな経験だったが、やはり苦労も多い。英語はさほど苦ではなかったが、ドイツ語は全然分からず、ストレスに感じることも多かった。そんなとき、私のメンタルを支えてくれたのは、やはり乃木坂46だった。

2020年3月、ドイツから帰国して現在の仕事に就いた。ところが、ここでも大きな壁が立ちはだかった。帰国早々、まだ生活もうまく立てられていないうちから、新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発出、右も左もわからない状況での在宅勤務が続いた。5月中旬に宣言が解除され、ある程度仕事場に行けるようにはなったが、気軽に人と雑談することさえ悪とされる状況で、なかなか同じ職場の人たちと打ち解けられない。先が見えない中、やはり救ってくれたのは乃木坂46であった。

メンバー自身も仕事ができず大変な状況の中、自分たちで撮影した映像をもとにMVを制作した「世界中の隣人よ」をリリース。購入しなくても乃木坂公式YouTubeチャンネルからフルサイズMVを見ることができるし、配信音源ダウンロード販売で得た収益は全額日本赤十字社に寄付されている*7。やはり、この人たちは、この世を救うために地上に舞い降りた女神たちだったのか。(いったん落ち着こう)

新型コロナウイルス感染拡大が続き、状況は悪い中でも、46時間テレビはなんとか実施された。この中で、最も印象的だったシーンがある。番組中で行われた「リスタートメッセージ」企画、要するに視聴者からのメッセージをメンバーが読み上げるのであるが、その中の一つに、その年の春から新たに医療事務員として働き始めたという人からのメッセージがあった。それを読み上げたのは3期生の山下美月であったが、乃木坂46への感謝が綴られたメッセージに、普段あまり人前で泣かない彼女が感涙、それをフォローしようとした1期生齋藤飛鳥もまた涙を浮かべてしまった。それを見て、私は涙腺ゆるゆるおじさん(3X歳)になると同時に、みんな頑張ってる、自分もまだまだ頑張れる!と思い直したものである。

 

先述の「いつのまにか、ここにいる」の中で、振付師のSeishiro氏が

私にとってダンスは想像力だと思っている。

と言っている。そう、アイドルとは曲に乗せて様々なストーリーを伝える表現者なのである。歌の上手さでは本職の歌手に敵わないし、ダンスだって本職ダンサーには敵わない。それでも、彼女らのパフォーマンスにはストーリーがある。それは人を惹きつけてやまない。だから、彼女らは立派なアーティストである。

 

ここまで色々とアツく書き連ねた訳であるが、一言でいえば、要するに「沼にハマった」ということだ。

 

すべてを受け入れるということ

本名氏という方が「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて女性アイドルグループを愛するようになったか」という記事の中で、

私が女性アイドルグループの応援を始めるに際して用意したものはただひとつだけでした.
それは "推す" と決めたアイドルグループの全てを 100% 肯定し続けるという覚悟です
逆に言うと,女性アイドルグループの応援は私にとって「肯定する」ということ自体を楽しむ趣味なのだと考えてもらっても良いです.
肯定するという体験自体が,私にとって極めて価値のあるものだからです.

と書かれている。私はこれに脳死全面的に賛同し、「推しのすべて肯定する」ということを重視している。

もちろん、人には好き嫌いがあるし、私にもこの曲は苦手だとか、このMVはちょっと合わないとか、確かにある。ただ、それはたまたま私の好みに合わなかっただけで、必ずしも作品として劣っているということを意味しないし、そもそも私には自分好みのコンテンツを選んで楽しむ権利がある。エンタメだし。もちろん、自分が嫌いなものは批判だってしてもいい。でも、それって疲れないですか?

それに、「常に今のファンが満足できる作品が提供される」状況になったとき、その先にあるのは、グループの衰退なのではないか。なぜなら、それは「今の乃木坂が好き」という人に受け入れられる作品であって、「今は乃木坂に興味がない」という未開拓層にアクセスできるものでは必ずしもない。それに、今の乃木坂ファンが10年後も乃木坂ファンであるとは限らない。今の乃木坂ファンの数をN1とし、その中で10年後もファンを続けている人の数をN2とすれば、どうあがいたってN2 < N1なのである。時々自分が若干の不満を感じる作品が出てくるというのは、ある意味では、グループが挑戦し続けている証拠なのではないだろうか。

 

ここまで長々と書いたのであるが、とにかく、乃木坂46というグループには感謝してもしきれない。研究上、つらいことや面倒くさいこと、メンタルがやられそうになることは結構ある。そんな時、乃木坂46のメンバーが、様々なコンテンツを通して癒してくれる。本当に、感謝してもしきれない。こんど出す論文、謝辞に書こうか。しかし、それは若干不適切であるから、その分私は躊躇なくさまざまなコンテンツに課金する。

 

なんかオチがない記事ですが、結論は

 

「やっぱ乃木坂だな!」

 

 

 

 

 

*1:なお、当時(いまもそうだが)友達いない人見知り孤独オタクだったので、劇場公演や握手会に行く勇気はなかった。

*2:その後、3月にもう1人...

*3:概ね、3期生のお見立て会の時期である。したがって、私は3期生の同期だと思い込んで止まない。

*4:公聴会も怖かったが、公聴会のための練習はその数百倍恐怖イベントであった。

*5:まぁ、ぶっちゃけ初期の卒業はスキャンダルによるものだったり、必ずしもポジティブではなかったので、1・2期に関しては生存バイアスも大きいのでしょう。

*6:AKBのドキュメンタリー映画に「少女たちは傷つきながら、夢を見る」という2012年の作品がある。...いやいや、少女たちを傷けてるのは運営お前らだろ、人を傷つけておいて、それで泣いてる少女たちを売り物にするんかい、と憤りを感じたものである。

*7:公平性のために言及しておくと、AKB48の「離れていても」も同様に、収益全額が寄付されている。