2月30日

役立つかもしれない情報をノートとして残しておく。

久しぶりに国際会議に現地参加した話。

6月28日から7月2日まで、ギリシャ・イオアニナで開催された国際会議に参加した。対面で参加した国際会議は、2019年10月以来2年半ぶりとなった。ここでは、その対面国際会議に久々に参加して思ったことを書き留めておく。とかいうと、「やはり対面だと有意義な議論ができる」とか、「それでもまだCOVIDのリスクは大きい」とか、そういう話が期待されますか?はい、そういう国際会議そのものに関する内容は一切ありません。

その一言からすべてが始まった

6月27日(月)。久々の海外出張で少し緊張しつつ、荷物片手に羽田空港に到着した。この日は、イスタンブールアテネ経由でイオアニナに向かう予定だ。日本から海外に向かうのは、2020年1月以来である。以前は海外に住んでいたこともあり、国際線の利用頻度は高い方で慣れていたはずではあるが、今回はより慎重になろうと心に決めていた(なお、この決意は結局まったく無意味なものとなる)。

トルコ航空のデスクでスーツケースを預ける。担当職員の方が、私のパスポート情報から予約情報を見つけ出し、荷物タグと航空券を発券してくださる。この時、

 

ギリシャの通関ルールのため、アテネでいったん荷物の引き上げが必要ですので、引き上げて税関通過後に、エーゲ航空のデスクで再預けしてください。」

 

と案内してくださった。...ん?いま、ちょっとだけ気になることがあった。その職員の方、いま印刷された荷物タグを見て少し怪訝な顔をして、手元の一覧表?のようなものと見比べた後、近くにいた上司のような方に「ギリシャってアメリカと同じルールですよね?」と確認していた?とはいえこの時はさほど気に留めなかった。まぁ、念のため確認したかったのかもしれないしね。しかし、それが後で大惨事を引き起こすことになるとは、この時はまだ思ってもいなかった。

 

事件発生

その後、予定通りにイスタンブール行きの便に搭乗、特に問題なくイスタンブール経由でアテネまでたどりついた。イスタンブールでは、間違えて国際便乗り継ぎではなく入国レーンにしばらく並んでしまい、なんかおかしくないか?と途中で気づいてあぶねーあぶねーと思いながら正しいレーンに並びなおすという小さなハプニングがあったのであるが、のちにそんなのは本当にどうでもいいハプニングだったと思い知らされることになる。

アテネには、6月28日(火)の9:05到着で10:00発。乗り継ぎ時間55分、搭乗開始時刻までは25分しかない。少しでも遅れたらやばい。しかし、アテネ到着は遅れることもなく定刻通りで、アテネ空港はさほど広くないことも事前に調べてあったので、問題が起きなければ十分に乗り換えられると考えていた。...だが、問題は起きるのである。

バゲージクレームで荷物を待っていたが、待てど暮らせど荷物は一向に出てこない。荷物が出始めてから30分が経過し、時刻は9:45。既に乗継便の搭乗が始まっており、出発時刻が15分後に迫っている。この時、おそらく似たような境遇にいたのであろう日本人の女性が、私の近くで焦った様子で地上スタッフの人にチケットを見せ、出発時刻が迫っていることをアピールされていた。地上スタッフは、「今すぐにゲートに行け!」のようなことを言っており、その方は荷物を待たずにゲートに向かっていた。

自分も同じ境遇にある。さぁどうする?もしゲートに向かうなら、今すぐ向かうしかない。考える時間はない。私は、なんとなく、その地上スタッフがシェンゲン外からシェンゲン内に入域する際に通関が必要だと理解していなかったのではないか?と疑った。根拠はなかった。しかし、私は確かに羽田で「アテネで一度荷物の引き上げが必要」と言われたのである。このまま荷物を無視してイオアニナに向かったら、荷物がアテネ空港に放置されてしまうことになる。きっと誰も責任もってその荷物を守ってなんかくれないだろう。飛行機は最悪お金を払ってでも変更できる。そう思い、自分は荷物を優先した。これが結果的に、大きな判断ミスだった。

 

結局、自分の荷物は出てこなかった。この時点で既に10:00を過ぎており、予定していた便には乗れないことが確定していた。ただ、夕方に別の便があることを知っていたし、まずは荷物について解決し、次に便の振り替えをして、時間があればアテネ観光でもしてやるか~ぐらいに考えていた。この時のお前、本当に能天気だったな。この後、以下のように様々なデスクをたらい回しにされることになる。ちょうどトルコ航空からエーゲ航空に引き渡されるタイミングで事件が発生したため、話が非常にややこしいことになったのだ。

  • バゲージクレーム内のサービスデスク「ひとまず状況を確認するためにトルコ航空のデスクに行きなさい。」
  • トルコ航空デスク「お前のチケットはイオアニナ行きじゃないか。なんでアテネで荷物を待とうと思ったんだ?」...は?羽田で聞いた話と違う。彼曰く、
    • 荷物タグにはイオアニナまで行くと書いてある
    • 羽田の職員がそういったならまだ荷物がアテネにあるかもしれない
    • とにかく、振替便のことと合わせてエーゲ航空に聞いてくれ
  • エーゲ航空デスク「お前のチケットはイオアニナ行きじゃないか。なんでアテネで荷物を待とうと思ったんだ?」...は?やっぱり羽田で聞いた話と違う!彼女曰く、
    • イオアニナ行きの便は翌日まですべて満席で振り替えられない。バスでイオアニナに行くか、あるいはイオアニナに比較的近い別の空港まで行って、そこからバスで行くというオプションはある。
    • まずは荷物のことを整理した方が良い。まずインフォメーションセンターに行って事情を話して、バゲージクレームに入れてもらったら荷物運搬サービスのデスクに行きなさい。
  • 荷物運搬サービスデスク「 荷物タグはイオアニナまでバゲージスルーで行くことになっている。荷物は既にイオアニナに向かっているだろう(実はこれは間違いだったと後で知ることになる)。早くイオアニナに行きなさい!」

最初はだれが正しいことを言っているのかわからなかったが、とりあえず"Why did you wait for your baggage?"と何度も何度も言われたので、どうやらあの羽田のトルコ航空職員の案内が嘘だったのではないかと思い始めた。

いずれにしても、非常にまずいことになった。振替便がなければ、空路でイオアニナには行けない。幸い、国際会議での発表はまだ3日後なので時間がある。しかし、荷物が手元にないので着替えなどもない。アテネに無駄に2日間いても仕方ない。いろいろな情報をインプットに、脳内のしょぼいCPUをぶん回してニューラルネットワークをトレーニングした結果、バスでイオアニナに向かうというのが最善解だと判断した。

 

ローカル路線バス乗り継ぎの旅...どころじゃない

しかし、荷物を失った人間にとって、空港は電源もWiFiもあり、治安も比較的良いシェルター空港の外はどこに敵が潜んでいるかわからないサバンナである。裸同然で焦って空港の外に出れば、最悪死ぬ。ここで一度冷静になって、またも脳内のしょぼいCPUをぶん回して死ぬ状況をシミュレートし、そこから生き延びるためには何が必要かを考えることにした。

  • 情報へのアクセス手段がなくなったら死ぬ。 この出張には、日本で購入した海外格安SIMを持参していた。この国際会議の後ジュネーブに向かい、某C研究所にて1か月ほど研究活動をする予定であったためである。国際会議中はきっとスケジュールがきっちり決まっているし使うこともそんなにないだろうと思い、ジュネーブについてからactivateしようと思っていた。が、いまこの状況では、今すぐここでactivateするしかない。海外格安SIMの利用は初めてだったのでかなり不安が大きかった。が、説明書通りに設定し、無事モバイル接続できた。よかった。このSIMは2年前に買ったものだったし、問題なくactivateできる自信は100%ではなかった。いまこの状況で、もしモバイル接続できなかったら相当やばかった。本当によかった。ここでの安心感はでかい。
  • スマホの充電が切れたら死ぬ。モバイル接続できたから安心というわけではない。スマホの充電は切れるのである。スマホの充電器は日本のAタイプなので、Aタイプ→Cタイプの変換アダプタが必要となる。1つぐらい手荷物に入れておくべきだったのだが、不覚にも3個ぜんぶの変換アダプタを預け荷物に入れてしまっていた。しかし、ここは国際空港である。Aタイプ→Cタイプ変換アダプタはなくとも、ユニバーサルタイプの変換アダプタを売っている可能性は高い。いまここで手に入れておかなければ、街中で手に入れられる確率はぐっと低くなるかもしれない。...しかし、残念ながらユニバーサルタイプの変換アダプタは売っていなかった(たぶん、売り切れていた)。だが、CタイプのUSB充電器があった。これがあれば、とりあえずスマホの充電はできる。よかった。

これで、街中に放り出されても死なない準備が整った。バスセンターまで路線バスで1時間。実は、この時点では、行ったところで、今日のバスがいつあるのか、バスがあっても空席があるのか、まったくよくわかっていなかった。ウェブで調べようとしたのだが、よそ者が理解できるような親切設計にはなっていなかったのだ。だが、空港にいても何も起こらないことは確定していたので、一か八かでバスセンターに行くことにした。

そして、13:00を回った頃にたどり着いたのは

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...なんともまぁ、スラム街のようなところにある小汚い(失礼)バスセンターだった。とにかくチケットを買わねば...と思ったが、チケットオフィスが見当たらない。15分ほどさまよい、焦りが募ってきたころにようやくチケットオフィスを見つけることができた。怪しげな売店が並んでいる中の1つがチケットオフィスだった。めちゃくちゃわかりにくいぞ。15:30発にイオアニナ行きがあり、チケット購入成功。勝った!!!これは勝ち確である。間違いない。とにかく今日中にイオアニナにたどり着けることが確定した。

バスまで約2時間。イオアニナについたら、まず空港に行って荷物を回収しよう、などと戦略を練ってみたり、かっきー(乃木坂46の賀喜遥香さん)が掲載された東京カレンダー*1を読んだりしていた(たまたま出発直前に見つけて機内で読もうと思っていたため、預け荷物ではなく手荷物に入れていた)。その後、空いているコンセントを見つけたため、後半1時間はスマホを充電した。ここで、ただただ目の前にあった時計をじっと見つめるだけで1時間をやり過ごすという技を身につけた。もう、今後の人生で空き時間ができたとき、やることがなくて困るということはないだろう。時計をじっと見つめるだけで時間をつぶすことができるのだから。

 

15:30、バスは無事イオアニナに向けて出発した。よし、これでとにかくイオアニナにはたどり着ける!!!ちなみに、経路はエーゲ海沿いで非常に風光明媚なところでした。

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(この辺、若干楽しむ余裕が生まれていた。もっとも、景色を見ること以外やることがなかった。)

空路であれば1時間のところ、5時間以上をかけてついにイオアニナに到着。経路的に空港近くを通るので、もし降りれたら、そこで降りて荷物の回収に行ってしまおうと考えていた。...が。

空港の写真は↓こんな感じ。

photoioannina.blogspot.com

え、なになにこの空港、あまりにしょぼくない???生まれて初めて見るしょぼさの空港である。なんというか、ど田舎出身の私の地元駅よりもしょぼい。電気もついている気配がないし人気もない。こんな人気のないところで降ろされて、もし空港が閉まっていたら、市内までの移動手段がなくなって完全に詰む。やばい。この日は諦めて、ひとまずホテルに向かうことにした。


ついに荷物回収...?

翌日、6月29日(水)。やっぱりウェブ上に情報が少なく、空港の雰囲気がいまいちつかめなかったが、しかしあれだけしょぼい空港である。8時とかに行っても閉まってるんでしょ。というわけで、9時を狙って空港に向かった。正解だった。窓口は9時からであった。よし、勝ち確!!!

...そんな希望は、

 

"There is no luggage here."

 

という、デスクスタッフの一言によって完全に打ち砕かれた。まじかよ。おい、アテネの空港の人、イオアニナにいけばあるって言ってたじゃんか。

ここでのやりとりは、

  • 荷物はまだアテネにあるかも。何かの荷物が次の便で到着するというレコードがある。(→結局、これは私の荷物ではなかった)
  • とにかく、まずはロストバゲージのクレームをしなさい。

の2点。ないものはないで仕方ないので、荷物の引き取りはいったんあきらめることにした。

しかし。生活に必要な物品がない。国際会議をサボって市内で買い物しようかとも考えたが、ど田舎の小さい街で、ググってもショッピングモールのような場所がない。一人で頑張っても、時間だけ浪費して何も得られない可能性がある。国際会議会場の方が情報収集できる。まずは会場にいって、以下2点を遂行することにした。

  • 日本人参加者を見つけてAタイプ→Cタイプ変換アダプタを借りる。(PCの充電に必要)
  • 地元に詳しそうな人を見つけて、買い物に適した場所を聞く。

これが好判断だった。すぐに日本人を見つけることができ、変換アダプタを借りて、バッテリーが切れかけたPCの充電をすることができた(本当にありがとうございますありがとうございます)。また、国際会議の裏方役の秘書さんがおり、事情を説明したところ街中で買い物できそうな店の名前を聞けた。おかげで、街中で衣服を買い、3日間着続けたTシャツを脱ぐことができた。あぁ、文明!一人で街をさまよっていたら、死んでいた可能性がある。

この日、トルコ航空ロストバゲージのクレームをしたところ、

We’d like to provide assistance, however in this instance and in accordance with transportation rules, the final carrier stated on your ticket is responsible for your delayed/lost/damaged/missing baggage.Please contact Aegean Airlines that carried you to your final destination as soon as possible.

We hope you’re able to resolve this situation. 

という連れない返信だけが返ってきた。こういうときだけは返信が早い。こいつら、絶対に手元にある情報で荷物の現在位置とか調べずに脊髄反射で返信してるよな???

ともかく、次にエーゲ航空ロストバゲージのクレームをしようとしたのだが、これがよくわからない。荷物に問題があったときには、登録した携帯番号にSMSが届く、とあるが、そんなものは届いていない。よくわからないので、もういっそ空港で問い合わせることにした。


空港での闘い、再び

翌日、6月30日(木)も、朝に空港に向かった。私は知っている、空港は9時からしか空いていない。慣れた足取り(?)でエーゲ航空デスクに出向き、

という2点を説明した。

ここでエーゲ航空の職員さんに説明されてようやく理解したのだが、私がエーゲ航空の便に乗らず、バスを使った時点で、エーゲ航空は私の荷物を運ばなければならない責任はなくなる。おそらく、私が10:00発の搭乗予定の便までにセキュリティーを通過しなかったため、荷物は飛行機から降ろされ、現在もアテネ空港に留め置かれている可能性が高い。状況を整理すると、

  • トルコ航空は、アテネまで荷物を運んだので、責任を果たした。
  • エーゲ航空は、搭乗していない客の荷物を運ばなければならない義務はない。
  • 結局、私が勝手に荷物を空港に放置してバス移動したのと等価な状況である。

ということである。したがって、自分でアテネ空港のlost and foundに問い合わるというのが正しい。ということが分かった。状況がはっきりしただけでも、タクシー代を払って空港に来た価値はあったが、荷物回収の可能性は確実に遠のいた。空港のlost and foundがまともに対応してくれるとはあまり思えない。


結局、アテネ空港でどうするのが正しかったのか

エーゲ航空のウェブサイトに、以下のページがある。

https://en.aegeanair.com/travel-information/at-the-airport/connecting-passengers/

シェンゲンエリア外からエリア内にギリシャ経由で入域する時には、アテネ空港で税関を通過する必要があるとされている。これは羽田でのトルコ航空職員の案内と一致する。しかし、IMPORTANT NOTICEの部分に、以下のようにある。

There are specific customs restrictions for passengers entering Greece from any country outside the Schengen Zone (Extra Schengen), Switzerland, Liechtenstein, Iceland and Norway. Apart from the Athens Airport, other airports in Greece that have customs control are: Thessaloniki, Heraklion, Chania, Corfu and Rhodes. Customs control will be available temporarily (26 April 2022 until 30 October 2022) also at Santorini, Mykonos, Ioannina(exception applies to flight OA160), Samos, Kavala, Kos,Chios, Mytilene, Zakynthos and Skiathos airports.

4月26日から10月30日までは、イオアニナでも税関をやっているとのことである。さらに、ここには明記されていないのだが、リーフレット

https://en.aegeanair.com/-/media/files/travel-info/entypo_connecting-passenger_20x10cm-web.jpg

のIMPORTANT NOTEを見ると、

If your final destination is any of these airports, you can collect your baggage and clear through Customs, there.

とはっきりと書かれている。つまり、今回の場合はイオアニナで税関を通過すればよく、したがってアテネで荷物を待っていても出てこないのは当然だったということでほぼ確定である。要するに、あの羽田のトルコ航空職員が嘘こいたために、こんなひどい状況に落ち込んでしまったのである。しかも、口頭でのやり取りだったため、証拠もない。とりあえず、トルコ航空日本支社には、"確認"のメールを入れた(あくまで確認ですよ、確認...本当のことが知りたいだけですからね?)。


突然の連絡

この時点(6月30日(水)の時点)で、荷物の回収は95%以上諦めていた。国際空港での持ち主不明荷物など、日々大量に生成されていると思われる。その中の1個を、1人の顧客のために探し出してくれるサービスなど、期待できるわけがない。そこまで重要なものを失ったわけではないし*2、既にイオアニナ市内で買い物をし、今回の出張をやり過ごすのに最低限必要なものは手に入れた。

よく見ると、7月3日(日)のジュネーブへの移動時、アテネで3時間の接続時間がある。ここで回収を試みて、ダメだったら諦めようとほぼ心に決めていた。

 

7月2日(金)の夜。この日はエアコンに晒された状態で5時間休憩なしぶっ通しのパラレルセッションに出ており、若干体調が悪くてホテルに帰着後ベッドで寝ていたら、突然電話が鳴った。なぜ電話?海外格安SIMだし、使いだしてしばらくすると、販売会社(本社はイギリス)から宣伝の電話でもかかってくるのだろうか、と思いつつスマホを見てみると、+30から始まるギリシャの電話番号である。恐る恐る出てみるとイオアニナ空港からで、

 

"Your baggage was arrived."

 

...な、な、なんと!!!これには思わず叫んでしまった。一方で、ここまで散々期待を裏切られたのを忘れたのか、まだ勝ち確ではないぞ、と思う自分もいた。まだ、他人の荷物の誤認という可能性がある。この時既に、窓口閉鎖時刻に近かったので、翌日7月2日(土)に空港に行くことにした。

翌日。ホテルの近くでタクシーを捕まえ、9:00に空港に着いた。もう3回目である。慣れたものである。慣れたくなかったが。なぜ、国際会議参加期間4日中、3回も空港に通っているのだろう。

カウンターにつくと、そこにあったのは

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これ。あった、本当にあった!!!今度こそ本当に勝った!!!

 

なぜ、エーゲ航空が突然荷物をイオアニナまで運んでくれたのかはわからない。もしかするとそういうシステムだったのかもしれないし、もしかすると前々日ぐらいに対応してくれたイオアニナ空港のベテラン職員さんが、気を利かせてアテネ空港に連絡してくれたのかもしれない。いずれにしても、エーゲ航空には莫大なる感謝の念が生まれた。(なお一方でトルコ航空には(以下自粛))

結局、国際会議最終日に、ようやく一連の事件は収束したのであった。(本当に、過去一研究発表に集中できない国際会議だった...。)


まとめ

今回の事件の発端は、羽田のトルコ航空職員が誤った情報を伝えたせいで、アテネ空港で私が出てくるはずのない荷物をバゲージクレームで永遠に待ってしまったことにある。明らかにトルコ航空に非があるが、証明のしようがないため、余分にかかった費用はすべて私が負担せざるを得ない。

  • アテネ空港→イオアニナのバス代 約50ユーロ
  • イオアニナで購入した衣類その他必需品 約80ユーロ
  • イオアニナ空港まで往復した際のタクシー代 約90ユーロ

合計、約220ユーロ。トルコ航空には苦情を入れたので、誠実な返事をもらえることを期待したい*3

今回の一件で200ユーロかけて学んだのは、

  • 航空会社職員のいうことを鵜呑みにしてはいけない。少しでも不安げにしていたら、徹底的に突いて本当の情報を引き出す。
  • 体は荷物に優先する。体さえ目的地に到着していれば、航空会社は目的地まで荷物を運搬する責任を負うので、ちゃんとdelay baggageと扱われて目的地に届く可能性が高い。とにかく、目的地に行け!(もっとも、今回の場合は「荷物を待たずに乗り継ぎ便に乗る」が大正解だったのだが)
  • 少しでも不安に思ったらその辺のスタッフに尋ねる。今回の場合、バゲージクレームで地上スタッフに尋ねていた日本人を見かけたときが、最大のターニングポイントだった。同じようにそのスタッフに聞いていれば、恐らく乗継便に乗るという選択をして、イオアニナに予定通りについて、さらに荷物も受領できたわけである。

まぁ、これは高い授業料だったと思って、今後は気を付けよう。あと、もしこれを見ている航空会社職員の方がいたら(いないと思うけど)、あなたの思い込みによる誤った案内が、客にとってとんでもない結果を生む可能性があるということは覚えておいていただきたい。たとえば入社テストだったら、確信度90%の答えがあったら、10%は自信がなくとも取りあえずそれを書いておけば正解になるかもしれないし、少なくとも空欄にするよりはマシだろう。だが、そういうペーパー試験のノリで客の案内をされたらたまったもんじゃないということは主張したい。

 

きっと、自分なんかよりもはるかに旅慣れた人からしたら、こんなことそれなりにあるよとか、それはそもそも事前準備不足調査不足が原因でしょ、ということなのかもしれませんが、ひとまず自分の中では過去一で面倒だった海外出張中の事件だったので、ここに文章としてまとめることで、ネタとして昇華しようと思い立ったのでした。

*1:

https://tokyo-calendar.jp/article/23790

*2:なお、預け荷物の中で最も高価だったのは

https://www.nogizaka46.com/s/n46/news/detail/65469?ima=2606

 これの「完全生産限定盤“コンプリートBOX”」である。国際会議参加後のジュネーブ滞在中、土日にあまり外を出歩きたくないし...ということで持ち込もうとしていたものだった。この記事を書いている時点で、まだほとんど見ていない。

*3:といいつつ、所詮一職員が起こした一個人に対する事故について、大企業が企業として誠実に対応するなんて、まったく期待はしていないけれど

某グループのライブに参戦した話。

某超人気グループのライブに参戦した。ライブチケットが当選だけでも奇跡である。

 

以下、ネタバレなし(セトリや演出、MCの内容など)の感想。

  • 神席オブ神席。メインステージまで約10 m、花道まで約5 m。あまりに目の前すぎて、何度か踊るメンバーと目が合った気がして「あっ...」と思って条件反射で目をそらしてしまったほど。なお掛橋さんと山下さんはレスしてくれたと信じてる。
  • いざライブが始まってメンバーが出てきても、なんか目の前で繰り広げられている光景があまりに神々しく現実離れしており、これは立体映像を見せられているのでは?と思ったほど。
  • なお、今回の目標は「小顔でスタイル抜群ゆえテレビで見てもいまいちサイズ感が掴めない齋藤さんのサイズ感を確認する」でしたが、そもそも乃木坂メンバーみんなスタイルがバグってて、結局よくわかりませんでした。
  • その齋藤さん、もう文句なしで真ん中に立ってグループを引っ張る人だなぁ。
  • そんな齋藤さんと、次世代を確実に担うであろう遠藤さんの絡みになんど心が浄化されたことか。あ、これ、僕のような人間が目の当たりにしていいやつだったんすか?
  • 梅澤さんのパフォーマンスがテレビ画面で見る以上に迫力あって美しくて感激でした。やはり高身長手足の長さは武器である。
  • 鈴木さんや北野さんはじめ1推しのみなさん(1推しとは)も間近で見れてたいへんたいへんよかったです。次回チャンスがあれば、必ずタオル持っていこう。

結論:やっぱ乃木坂だな!!!

コーディング規約

例えばC++でプログラミングをしてコンパイルをすると実行ファイルができますが、これは「C++という人間が比較的理解しやすいプログラミング言語を使ってコンピューターに自分が何をしてほしいかをソースコードに書き、それをコンパイラにコンピューターが理解できる形式にしてもらう」ということをしています。コンパイラにとっては、C++ソースコード中に含まれるクラス名や関数名が何であろうと関係ないので、コーディングする人はC++文法を遵守する限り、どんな書き方をしてもコンパイラ的には問題ありません。

ただし、仕事が進むと複数名で1つの大きなプログラムを書くことが増えますし、自分が別の仕事に移った後、共同開発者などがそのプログラムを改良したりメンテナンスすることもあります。このような場合、プログラミング言語の文法的にミスのないソースコードを書くだけでは不十分で、「自分が書いたソースコードを他の開発者が読むことで、自分がコンピューターに何をしてほしくてそのコードを書いたのかを理解できる」ということも重要になります*1。そのために、コーディング規約を定めておくことが有用です。

以下に私が普段倣っているコーディング規約を、一例としてまとめてみます*2。コーディング規約は必ずしも厳密なルールではなく、一般的に使われている規約にもいくつかパターンがあります。開発チームの中で、自分が普段使っているものと異なるコーディング規約が使われている場合には、チーム内で使われている規約を優先するべきです。また、時と場合によっては取り決めから外れた書き方をした方がわかりやすくなることもありますし、1秒でも早くデータ解析結果を出さなければならない時にはコーディング規約なんて守ってられないこともあると思います。

変数やポインタなどの命名規則

適切かつ簡潔な英語に基づいて、意味のある名前を付ける。

  • 良い例:int lineNumber = 0;
  • 悪い例:int nl = 0; // 他の開発者はnlが何を意味するのか分からない。
  • float valueとかint numberのような変数名は抽象的で、何のvalueやnumberなのかわからない。例えば電流の測定値だったらfloat measuredCurrent、シリアル番号だったらint serialNumberのように具体的に意味が分かるように名前を付ける。
  • 省略形は、共同開発者の中で共通認識となっているもののみ使用可。例えばASICとかFPGAは比較的一般に知られている言葉なので使ってよい。例えばdata analyserのような自作パッケージを書いたとして、それを呼ぶときにDAと略すと何のことかわからないので、dataAnalyserと書いた方が無難。

似たような名前の変数を定義しない。

  • 例1:taggerTagger; // 1文字目が大文字か小文字かの違いしかない
  • 例2:SOとS0; // 1つ目はエスオー、2つ目はエスゼロ

privateまたはprotectedなメンバー変数はm_からスタートする。それ以外の変数は絶対にm_から初めてはいけない*3

  • 例:int m_serialNumber;

class、enum、typedefの名前は大文字から始める。変数や関数名は小文字から始める。

  • 例:class Tagger;
  • 例:enum Color {green, yellow, red};
  • 例:typedef vector<DataAnalyser*> InputVector;
  • 例:double energy;
  • 例:void extrapolate();

2単語以上の場合、1単語目の大文字 or 小文字は上記に倣い、2単語目以降は単語の1文字目を大文字にしてつなぐ。(キャメルケースと呼ぶ)

  • 例:class DataAnalyser;
  • 例:double measuredCurrentVsAppliedVoltage;

ブーリアン(bool型)を定義するときには、直感的なわかりやすさに気をつける。

  • 良い例:bool isOddNumber = true; // これなら「奇数ならtrue」と直感的にわかりやすい。
  • 悪い例:bool isNotOddNumber = true; // これだと「奇数でないときにtrue」と否定と肯定が混ざり合って混乱を招く。例えば、if (isNotOddNumber) とするより、if (!isOddNumber) と「isOddNumberが偽のときに実行せよ」という書き方をした方が可読性も高い。

bool型変数の変数名は、isやその他一般動詞から始めるようにすると意味がはっきりしてわかりやすいことが多い。

  • 良い例:bool isOddNumber = true;
  • 悪い例:bool oddNumber = true; // odd numberというのは「奇数」を表す一般的な名称でしかないので、あとからコード中にoddNumberが出てきたときに、これがbool型だということがすぐにはわからない。

コードの書き方の作法

コードの書き方変数は実際に使う場所の直前で定義し、必ず初期化する。

  • 良い例:

    int channel = 0;

    if (setChannel) channel = atoi(argv[1]);

    measureCurrent(channel);   

  • 悪い例:

    int channel;

    if (setChannel) channel = atoi(argv[1]);

    measureCurrent(channel); // もしsetChannelがfalseになると、channelが初期化されずにmeasureCurrent関数に渡されてしまい、挙動がおかしくなったりセグバイを引き起こしたりすることがある。

マジックナンバーリテラル(要するに、値の直書き)はできる限り避ける。

  • 良い例:      

    class HistogramHandler {

        ...

        TH1F *m_histogram;

        static TString m_histPrefix;

     }

     ...

     m_histPrefix = "hist_";

     ...

     void HistogramHander::getHistogram(TFile *fData, int channel) {

       m_histogram = (TH1F*)fData->Get(m_histPrefix + TString::Itoa(channel, 10));

     }

  • 悪い例:

    class HistogramHandler {

        ...

        TH1F *m_histogram;

    }

    void HistogramHander::getHistogram(TFile *fData, int channel) {

        m_histogram = (TH1F*)fData->Get(TString("hist_") + TSTring::Itoa(channel, 10));

    } 

 

やってしまいがちなのは、解析したいチャンネル番号や動かしたい装置のアドレやポート番号などをソースコードの中に逐一直書きしてしまうこと。そうすると、それらの値を変更する必要が生じたとき、どこを合計何箇所変更すべきかがわからなくなり、全部直したつもりが一部直っていなかったためにエラーになったり、最悪の場合自分が気づかないうちに誤ったチャンネルのデータを解析してしまうこともある。

その場しのぎのインデックスを定義せず、enumを適切に使う。

  • 良い例:

    enum MeasurementType = {resistance, capacitance, current};

    int const numberOfMeasurements = MeasurementType::current + 1;

    float results[numberOfMeasurements] = {0};

    ...

    results[Measurement::registance] = getResistance();

    results[Measurement::capacitance]  = getCapacitance();

    results[Measurement::current]  = getCurrent();

    ...

    std::cout << results[Measurement::resistance] << std::endl; // この行を見るだけで抵抗値の測定結果を表示していることがすぐわかる。  

  • 悪い例:

    float results[3] = {0};

    ...

    results[0] = getRegistance();

    results[1] = getCapacitance();

    results[2] = getCurrent();

    ...

    std::cout << results[2] << std::endl;

この場合、[0] = 抵抗値、[1] = 静電容量、[2] = 電流と対応づけられていることが、results[i]に値を詰めている部分を読んで初めてわかるが、この関係は第三者にとって自明でない。特に、std::cout行が離れていると、results[2]が結局何を出力しているのかという意味がわからない。

コメントを適切に入れる。

特に複雑な処理をしている部分は、コメント無しで他の開発者が理解することは難しい。コメントはできるだけ、自分以外の人に説明するつもりで丁寧に入れる。

余分なコメントアウトは残さないで削除する。

試行錯誤をしているうちはコメントアウトを残しておいた方がよいこともあるが、一通りテストが終わったらコメントアウト行は「念のため」で残さず削除した方が良い。もし、何らかの理由でデバッグ用に残したいときには、コメントアウトで対応せず、デバッグフラグを設けておいて、それがtrueの時にはその行を実行する、というようにする。

デバッグメッセージの出力方法

デバッグ中、ある変数にどんな値が入っているかをstd::coutして表示したくなることがある。その値が出力結果を見てどんな意味を持つか自明なうちはいいが、あまりに何でも出力すると、結局その値がどこで出力されているのか、第三者にはわからなくなる。デバッグが終わった後、残しておいた方が有用な表示は、それが何を意味するのかわかるようにしておく。不要な表示は残さず削除する。

たとえば、以下の場合

    for (int ix = 0; ix<10; ix++) {
        float x = ix * 0.1;
        std::cout << x << std::endl;
        float x_shifted += 0.2:
        std::cout << x_shifted << std::endl;
    }

表示結果は以下のようになる。

    0
    0.2
    0.1
    0.3
    ...

これを100行表示した後、どちらがxでどちらがx_shiftedだったかわかるだろうか。これぐらいであれば規則性があるのでわからないこともないが、例えば変換がより複雑だったり、これに例外処理が入ってx_shiftedが表示されないことがあったり、処理が複雑になるともはや第三者には追うことができなくなる。

    for (int ix = 0; ix<10; ix++) {
        float x = ix * 0.1;
        float x_shifted += 0.2:
        std::cout << "(x, x_shifted) = (" << x << ", " << x_shifted << ")" << std::endl;
    }

 これであれば、(x, x_shifted) = (0, 0.2)のように、意味も合わせて表示されるため、第三者でも一目で値の意味が分かる。

デバッグしながらコードを書いてるときは頭がフル回転しているためこういう体裁的なことまで気が回らないことが多いかもしれないが、最後人に渡すとき(例えば人に使ってもらうとか、gitにマージするとか)には、10分だけ時間を割いてきちんとわかりやすく整理し、不要な行を削除しておくだけで、他人の数時間を節約することにもなる。

 

*1:自分専用プログラムでも、真面目にわかりやすく書いた方が、後からコードを見返す必要が出た時に圧倒的に楽です。

*2:某実験グループ内部で規定されているコーディング規約に基づいています。基本的にはC++でコーディングする際の標準的な規約が踏襲されているため大いに参考になりますが、細かい部分については、単に実験グループないではこのような表記が推奨されているというだけの部分もあります。

*3:これ、ちゃんと区別して書かないと、本当に他人には挙動がわからないプログラムになります。ローカル変数にm_を付けるのは問題外として、グローバル変数に何も接頭辞を付けず、関数の中で似たような名前のグローバル変数とローカル変数を混在させてしまうというのは非常にありがちです。

なぜ乃木坂を推すのか。

大学生ぐらいまで、アイドルなんて下らない、と思っていた。当時、AKB48が結成されて何年か経ち、前田敦子大島優子を筆頭に、グループが隆盛を極め始めていた頃。様々な形でメディアを賑わし、有名音楽番組には必ず出演していて、目にする機会は多かった。...うーん、前田敦子がそんなかわいいと思わないし、パフォーマンスも微妙じゃない?

 

ところが。見事にハマったのである。

 

なぜアイドルにハマったのか

ハマったのは、修士2年の12月。大学院を経験した人ならわかるだろう。修論追い込みの時期である。修論はつらい。本当につらい。人生で初めて、ちゃんとした文章を100ページ近くにわたって書かなきゃいけないし、その中で少しでも破綻した文章があればすぐにボッコボコにされる。しかも私の場合、測定がなかなかうまくいかずに、修論に必要なデータを最後12月中旬まで取っていたりもした。私からしたら、D論よりもはるかにつらかった(と思う)。

そんなとき、ふと松井玲奈にハマった。彼女の出身は愛知県豊橋市、とても馴染みのある土地である。そこから、当時住んでいた名古屋を拠点とするグループ、SKE48にハマった。AKB48系列であるが、AKB48ではなく姉妹グループから入ったのは、やはり同郷としての親近感を感じたからであろう。

推しメンかわいいし、かわいいみんなが歌って踊って楽しそうにしていると、自分までなんか楽しくなってくる。アイドル、すごい。メンバーの半分ぐらいは東海三県の出身で、なんとなく親近感もわく。時々、配信メディアなどで疲れた心を癒してくれる*1SKE48の活動拠点に住んでいたおかげで、時々あるイベントでの無料公演にはひっそりと参戦することもできた。そして、みんな頑張ってる、自分も頑張れる、などと気持ちを入れ直し、研究に勤しんだのである。

SKE48は、アツいのが良かった。首都・東京を拠点とする本家AKB48に比べると、名古屋が拠点のSKE48はメディアの露出機会が少なく、その分1回1回の全国ネット出演に賭けているように見えた。それもまた良かった。

なお、余談ではあるが、ハマって約1ヶ月しか経っていない2013年1月15日、有力メンバー9人の一斉卒業が発表された*2。したがって、私はメンバーの卒業にはかなり免疫がある。

乃木坂46の結成

2011年、乃木坂46が結成された。…が、「会いたかったかもしれない」などAKBのパチものにしか見えないパフォーマンスをさせられ、秋元康AKB48をより引き立てるために敢えて本家より貧弱なグループを作ったようにすら見え、正直乃木坂メンバーには哀れさすら感じたのだった。一時期、推しメンだった松井玲奈が交換留学として乃木坂に加わったので、その期間だけ少し情報を追い、「乃木坂って、どこ?」(当時)も見た。しかし、パフォーマンスもなんとなく、SKE48と比べたらお嬢様ぶっててアツさを感じず、AKB48よりも下手に見え、なんやこいつらとかいう若干ネガティブなイメージすら覚えたのであった。

 

そして、乃木沼へ...

ところが。見事にハマったのである。(2回目)

 

はまったのは、2016年の年末*3、博士論文執筆時が大方終わり、一息ついた...と思いきや、全然まともな文章を書けず、予備審査では「研究内容は良いが博士論文が十分な質に達していない」とコメントされ、 翌月には公聴会という超超超超超恐怖イベントも控えていた*4。そんなとき、乃木坂にハマったのである。

 

なぜ、一時期はネガティブにすら思っていた乃木坂だったのか?

 

巷では、よく「乃木坂は顔面偏差値が高い」と言われる。確かに、最初はそれに惹かれたのかもしれない。当時、グループ結成から約5年が経過し、当初は見た目だけでなく精神的にも幼く見えたメンバーたちが、垢抜けて美しい大人の女性に成長してもいた*5。初期の「秋葉系」路線から、清楚なお嬢様路線に方針転換もされていた。これも魅力的に見えた点の一つであった。

しかし、最大の魅力はメンバーからにじみ出る"雰囲気"だ。いいから、2018年のドキュメンタリー映画いつのまにか、ここにいる」を黙ってみてほしい。この映画に、乃木坂のすべてが詰まっている。

私がこのグループにハマってしばらく経って、徐々に驚異的なメンバー同士の仲の良さに気づいた。あまりに仲が良い。

よく「表では仲良くても裏では色々あるんでしょ?」などと言われるが、いまどきのアイドルはSNSやモバメなどあらゆる手段で情報発信しているし、だからごまかしが効かない。いくら表で取り繕っていても、本音はすぐににじみ出てくるものである。しかし、このグループ、みんな異常に仲がいい。これだけ大人数が集まって、しかもある人たちは選抜として表題曲を歌唱し、有名テレビ番組にも呼ばれ、露出が増えればモデルなど外仕事も増える一方で、非選抜メンバーは中々日の目を見ずに悶々とした日々を過ごしている。特に、AKBグループと違って「劇場公演」を持たない乃木坂の場合、選抜メンバーとそれ以外の露出機会はけた違いである。ゆえに、メンバー間の格差は大きいのである。普通、待遇の格差は人間関係の軋轢を生む。なのになぜ、こんなに仲が良いのか。「いつのまにか、ここにいる」の冒頭でも

異常に仲が良かった

と称されている。彼女らが、我々薄汚れたホモサピエンスどもと同じ構造の遺伝子を持っているとは思えない。実は、彼女らは天上界から人間界に舞い降りた女神たちであり、我々は女神たちの戯れを見せつけられているのではないか。

 

...冷静になろう。

 

大所帯グループでありながら仲の良さを保てている理由は色々あると思う。

  • グループの人気が安定していて、あまり前に出てこない(出てくることができない)メンバーにも一定のファンがついている。
  • 選抜総選挙のように、メンバーをあからさまに順位付けするイベントがなく、表題曲センターもまぁまぁ入れ替わる。AKB48系列に比べると、まだ緩いヒエラルキーの中で活動している。
  • これまで9年の活動期間で最若手はまだ4期生であり、人の出入りが比較的おとなしい。AKB48の場合は2005~2016年の11年間で16期、SKE48は2008~2019年の11年間で10期だから、その半分以下のペースでしか新メンバー加入が発生していない。
  • 運営がうまくやっているのも大きいはずである。AKB48系列のように、メンバーを不安にさせるサプライズもなく*6、そもそも乃木坂のサプライズは、2期生の中の研究生の昇格発表だったり、基本的にポジティブである。SKE48のファンだったころは、運営がメンバーをいい加減に扱ったり暴言を吐いたりという話が時々出てきていたが、乃木坂は今野義雄氏はじめ男性スタッフも含めて、スタッフ陣がいい感じに「ファミリー」として溶け込んでいるように見える。

そんなわけで、安心して推せて、なんとなく多幸感に浸れるアイドルグループである乃木坂46の方が、いい歳したおっさんには良かった。

 

2017年10月から2020年3月まで、私はドイツの大学に雇われて研究をしていた。海外生活は楽しくエキサイティングな経験だったが、やはり苦労も多い。英語はさほど苦ではなかったが、ドイツ語は全然分からず、ストレスに感じることも多かった。そんなとき、私のメンタルを支えてくれたのは、やはり乃木坂46だった。

2020年3月、ドイツから帰国して現在の仕事に就いた。ところが、ここでも大きな壁が立ちはだかった。帰国早々、まだ生活もうまく立てられていないうちから、新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発出、右も左もわからない状況での在宅勤務が続いた。5月中旬に宣言が解除され、ある程度仕事場に行けるようにはなったが、気軽に人と雑談することさえ悪とされる状況で、なかなか同じ職場の人たちと打ち解けられない。先が見えない中、やはり救ってくれたのは乃木坂46であった。

メンバー自身も仕事ができず大変な状況の中、自分たちで撮影した映像をもとにMVを制作した「世界中の隣人よ」をリリース。購入しなくても乃木坂公式YouTubeチャンネルからフルサイズMVを見ることができるし、配信音源ダウンロード販売で得た収益は全額日本赤十字社に寄付されている*7。やはり、この人たちは、この世を救うために地上に舞い降りた女神たちだったのか。(いったん落ち着こう)

新型コロナウイルス感染拡大が続き、状況は悪い中でも、46時間テレビはなんとか実施された。この中で、最も印象的だったシーンがある。番組中で行われた「リスタートメッセージ」企画、要するに視聴者からのメッセージをメンバーが読み上げるのであるが、その中の一つに、その年の春から新たに医療事務員として働き始めたという人からのメッセージがあった。それを読み上げたのは3期生の山下美月であったが、乃木坂46への感謝が綴られたメッセージに、普段あまり人前で泣かない彼女が感涙、それをフォローしようとした1期生齋藤飛鳥もまた涙を浮かべてしまった。それを見て、私は涙腺ゆるゆるおじさん(3X歳)になると同時に、みんな頑張ってる、自分もまだまだ頑張れる!と思い直したものである。

 

先述の「いつのまにか、ここにいる」の中で、振付師のSeishiro氏が

私にとってダンスは想像力だと思っている。

と言っている。そう、アイドルとは曲に乗せて様々なストーリーを伝える表現者なのである。歌の上手さでは本職の歌手に敵わないし、ダンスだって本職ダンサーには敵わない。それでも、彼女らのパフォーマンスにはストーリーがある。それは人を惹きつけてやまない。だから、彼女らは立派なアーティストである。

 

ここまで色々とアツく書き連ねた訳であるが、一言でいえば、要するに「沼にハマった」ということだ。

 

すべてを受け入れるということ

本名氏という方が「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて女性アイドルグループを愛するようになったか」という記事の中で、

私が女性アイドルグループの応援を始めるに際して用意したものはただひとつだけでした.
それは "推す" と決めたアイドルグループの全てを 100% 肯定し続けるという覚悟です
逆に言うと,女性アイドルグループの応援は私にとって「肯定する」ということ自体を楽しむ趣味なのだと考えてもらっても良いです.
肯定するという体験自体が,私にとって極めて価値のあるものだからです.

と書かれている。私はこれに脳死全面的に賛同し、「推しのすべて肯定する」ということを重視している。

もちろん、人には好き嫌いがあるし、私にもこの曲は苦手だとか、このMVはちょっと合わないとか、確かにある。ただ、それはたまたま私の好みに合わなかっただけで、必ずしも作品として劣っているということを意味しないし、そもそも私には自分好みのコンテンツを選んで楽しむ権利がある。エンタメだし。もちろん、自分が嫌いなものは批判だってしてもいい。でも、それって疲れないですか?

それに、「常に今のファンが満足できる作品が提供される」状況になったとき、その先にあるのは、グループの衰退なのではないか。なぜなら、それは「今の乃木坂が好き」という人に受け入れられる作品であって、「今は乃木坂に興味がない」という未開拓層にアクセスできるものでは必ずしもない。それに、今の乃木坂ファンが10年後も乃木坂ファンであるとは限らない。今の乃木坂ファンの数をN1とし、その中で10年後もファンを続けている人の数をN2とすれば、どうあがいたってN2 < N1なのである。時々自分が若干の不満を感じる作品が出てくるというのは、ある意味では、グループが挑戦し続けている証拠なのではないだろうか。

 

ここまで長々と書いたのであるが、とにかく、乃木坂46というグループには感謝してもしきれない。研究上、つらいことや面倒くさいこと、メンタルがやられそうになることは結構ある。そんな時、乃木坂46のメンバーが、様々なコンテンツを通して癒してくれる。本当に、感謝してもしきれない。こんど出す論文、謝辞に書こうか。しかし、それは若干不適切であるから、その分私は躊躇なくさまざまなコンテンツに課金する。

 

なんかオチがない記事ですが、結論は

 

「やっぱ乃木坂だな!」

 

 

 

 

 

*1:なお、当時(いまもそうだが)友達いない人見知り孤独オタクだったので、劇場公演や握手会に行く勇気はなかった。

*2:その後、3月にもう1人...

*3:概ね、3期生のお見立て会の時期である。したがって、私は3期生の同期だと思い込んで止まない。

*4:公聴会も怖かったが、公聴会のための練習はその数百倍恐怖イベントであった。

*5:まぁ、ぶっちゃけ初期の卒業はスキャンダルによるものだったり、必ずしもポジティブではなかったので、1・2期に関しては生存バイアスも大きいのでしょう。

*6:AKBのドキュメンタリー映画に「少女たちは傷つきながら、夢を見る」という2012年の作品がある。...いやいや、少女たちを傷けてるのは運営お前らだろ、人を傷つけておいて、それで泣いてる少女たちを売り物にするんかい、と憤りを感じたものである。

*7:公平性のために言及しておくと、AKB48の「離れていても」も同様に、収益全額が寄付されている。

オンラインカンファレンスを運営した。

普段からオンラインでミーティングしてるんだし、オンラインカンファレンスなんてちょっと参加者が増えただけで楽勝でしょ、と思ってたら大間違いだった、という話。オンラインカンファレンスの運営を通して、なぜオンラインカンファレンスが難しいかを学んだので、メモとしてまとめておく。

何をどこまで準備すればいいのかが直感的でない

普通のカンファレンスなら、部屋の予約→プロジェクターやオーディオ機器の準備、とやることが明確。オンラインカンファレスの場合は、代わりにZoom webinarなどを予約して完了…では終わらない。運営委員はwebinarの機能について一通り熟知しておかないといけないし、その上でチェアーのために詳細な手順書を用意しないといけない。チェアーが全員webinarに慣れ親しんでいるとは限らない。しかし、手順書を詳細にすればするほど、分量が多くなって読んでもらえない(カンファレンスのチェアーをやるような人々は、大抵偉くて忙しい人々)。よって、運営委員はセッション中にチェアーが困ったらすぐに助けられるように準備しておかなければならない。

人によって見え方が違う

「ホスト(コホスト)」「パネリスト」「聴衆」など、役割によって使える機能・使えない機能が違う。よって、自分の立場で確認して問題なくても、いざ本番になったら聴衆から苦情殺到…ということもあり得る。

予想外は必ず起きる

事前に一通り確認しても、いざ本番になると予想外の問題が必ず起きる。例えば、今回実際に起きたのは

  • コホストがいつの間にかホストになってて、その人が退出しようとして誤ってセッションを終了する
  • 録画して休憩中にいったんミーティングを終了してその間にmp4に変換しようと思ったら予想外に時間がかかり、時間通りに次のセッションを始められなくなる
  • なぜかウェビナーが無効になってる(たぶん「なぜか」じゃなくて理由があるのだろうけど、オンラインサービスは時々直感的でない挙動をする)

などなど。たぶん、こんなのは経験した人が世の中に無限にいるのだろうけど、かといって人の経験談をネットからかき集めてみても、自分のカンファレンスのセッティングでどの問題が実際起きうるかなんて区別がつかない。(運営委員にオンラインカンファレンス経験が豊富な人がいない限り)なので、こういう問題を確実に防ぐには、運営委員に加えてチェアー役と発表者役と聴衆役を呼んで1~2セッションをフルでドライランするぐらいしないといけないのだと思う。

いくら準備したところで、予想外は必ず起きる

参加者が突然接続できなくなって急遽順番入れ替えとか、Zoomのサーバーが落ちたとか、そういう突発的な問題はいくらリハーサルしたところで防ぎようがない。なので最後は臨機応変に対応するしかない。なので、恐らくオンラインの方がストレスは大きい。

 

(状況が変化した時に運営委員→参加者全体に随時連絡できるようにしておいた方が良いのかも。参加者数が500人以上とかいると、毎回メールを一斉送信するのも大変だし時間がかかるし、必ずしも全員が必要としているわけでもないので。情報発信するのにツイッターとかを用意しておいて、なんかあったらここ見てって言っておくと良い?)

 


あと、気を付けるべきと思ったこと。時差があって見れない人のために録画をアップロードするカンファレンスが結構あるけど、録画の場合

  • 発表だけでなくて質疑応答まで録画する場合、本来公開する意図のないバックアップスライドまで映ってしまったり、場合によっては不規則発言まで記録されてしまう。
  • 準備に手間取っているところまで録画してしまうと、思わぬもの(メールの内容とか)が映り込む可能性がある。
  • そもそも、顔が録画されるのを嫌がる人もいる
  • これらを全部パブリックにしてしまうと、後から問題になる可能性がある

正直言って、今回自分が関わったカンファレンスは、この辺をちゃんと詰めないままあまりに何も考えずに録画をパブリックにしてしまっていた気がする。良くないですね。本来、ここも運営委員の中でよく議論しておくべきですね。


今回、最大3セッションがパラレルに走るカンファレンスを運営委員を5人で回したけど、5人じゃ到底足りないというのが印象。各セッションに張り付く運営委員が最低2人、バックアップ要員がセッション数分は必要。当然、全体を統括する運営委員長はこの中に入ってはいけない(何かあった時に動けないと困るので)。

 

というわけで、いろいろ大変だったけど、得るものはいろいろあった1週間でした。

 

追記:これだけはどうしても言いたい。いくらオンライン開催でも、(相当やり方が固まったカンファレンスでない限り)運営委員は同じタイムゾーン(できれば、必要に応じて対面で議論できる同じ所属)から選ぶべき!今回、自分だけタイムゾーンが違って、夜遅くまで起きてなきゃいけないし、直接話せないから常にSkypeチャットの議論追ってなきゃいけないしで、とっても大変でした。

CERN夏の学校の話

いろいろありすぎて今日の仕事に対するやる気を喪失したので、文章を書きます。(深夜のテンションと勢いで書いてしまったので、その打ち消すかも。)

http://yamaguchi-1024.hatenablog.com/entry/2020/02/24/213438

このブログ記事に海外インターンとして「CERN Summer Student Programme」が紹介されています。ちなみに、ここでは学部3年生以上向けとあり、CERNとしてはそのようにしているようですが、日本人(厳密には日本国籍の人)は少し特殊で、日本はCERNのnon-member stateなのですが、KEKを通じてmember stateと同待遇での参加が可能となっています(参考:http://oskatlas.blog71.fc2.com/blog-date-20180126.html)。その代わりに、KEKでの選考基準として、参加時点で修士1年であるということが要求されます。*1ちなみに、CERNの募集要項を見ると、

If you are a national of either Canada, Japan or United States, please apply via the following websites:

- US
- Japan
- Canada

とあるので、日本国籍保有者は恐らくnon-member states扱いでの応募は原則受け付けていないみたいです。

 

私、幸運にもM1の時にこのプログラムに参加させて頂くことができました。もう9年前(!!!)ですが。その時のことは某機関誌の記事に書いていますが、その後博士号を取得し、研究者となってCERNに滞在して研究しているので、不思議な感じがしますね。ちなみに、その某機関誌の記事にも書いてありますが、CERNには10週間滞在し、ISOLDEというRIビーム施設で、青色発光ダイオードに使われるような半導体材料のフォトルミネッセンス分光をしました。全然高エネルギー実験ではないんですが、せっかくだからと思ってあえて自分の研究とはまったく違うことをやってみたわけです。

 

CERNでの生活は大変楽しくも色々と衝撃的でした。まず、文字通り「世界中」から人が集まってきている!私は日本の地方出身で、大学までは日本人以外の人と日本語以外で話す経験すらほとんどありませんでした(英語の授業でALTの先生と話すぐらい?)。旅行好きの母親に連れられて何度か海外旅行に行ったことはありましたが、そんなものとは比べ物にならない光景が目の前にありました。ドイツ、ポルトガル、スペイン、ギリシャアメリカ、中国、韓国、フィリピン…と、色々な国から来た学生や研究者が、"英語"というコミュニケーションツールを利用して、研究や生活を楽しんでいました。

 

それと同時に衝撃だったのが、自分の英語力のなさと、それゆえに学生グループの中になかなか入っていけない!(まぁ、そもそも人見知りっていうのもあるんですが)研究は良いんですよ、決まりきった単語しか使わないし、わからなきゃ何度でも聞き返すだけだし。ドイツ人グループに映画を見る会に誘われて行ってみたけど全然わからんし、そのあとだべってる時間ずっとドイツ語じゃなくて英語でしゃべってくれてたのに会話に入ってけないし、だいぶ悔しい経験もしました。

 

まぁ、とにかくインプレッシブな10週間でした。CERN夏の学校に参加する前は、私は漠然と「理系で修士ないと就職大変らしいから適当に頑張って修士とろう、そしたらそれなりの企業の就職して、ごく普通のサラリーマンとして日本という国で一生を終えるんだろうなー。」と思っていたのですが、この経験があまりに衝撃的過ぎて、博士進学してもうちょっとこういう国際共同実験で研究してみようと決意したのでした。*2それからn年が過ぎたいま、所属も生活拠点も海外にあり、もちろん英語にはとんど抵抗なく、日々ミーティングでもコーヒータームでもガンガン議論しています。以前はミーティングで英語での報告するだけでビビってたけど、今となっては1時間以上しゃべりまくるとか、自分がチェアとして議論を仕切るとか平気でやっているので、自分のことながらちょっとだけ成長を感じる。

 

というわけで、CERN Summer Student Programmeは研究者としてという意味だけでなく、人生の視野を大幅に広げられるとてもいいインターンだったと思います。

*1:"日本国外の大学・大学院に在学中の者は、CERN加盟国へ提示されている学生の条件と同等とします。"ともありますね

*2:これだけで博士進学を決意したわけではありませんが。